01 / DEFINITION

AI広報とは、「使う」と「理解される」を同時に設計すること

AI広報とは、生成AIや機械学習を広報業務に取り入れ、情報収集、企画、制作、発信、効果測定を支援する取り組みです。ただし、業務の効率化だけを見ていると、AI時代の変化を半分しか捉えられません。

顧客や採用候補者は、検索結果に加え、生成AIの回答を通じて企業やサービスを知るようになりました。企業側には、AIを業務で活用するだけでなく、公式な一次情報を明確に公開し、検索やAIが企業の現在像を理解しやすい状態をつくる役割もあります。

INSIDE

AIを使う広報

調査、企画、文章作成、再展開、分析を支援し、担当者が判断と関係構築へ時間を使えるようにする。

OUTSIDE

AIに理解される広報

企業・事業・実績について、明確で確認可能な一次情報を公開し、デジタル上の企業像を整える。

共通する土台は、事実、文脈、責任です。大量の文章を作ることではなく、正しい材料から適切な相手へ伝わる情報をつくり、結果を次の判断へ戻すことが目的です。

02 / USE CASES

AIを活用できる広報業務8選

AIが力を発揮しやすいのは、情報を集める、比較する、候補を増やす、形式を変える作業です。以下は、公開前に人が確認できることを前提とした代表例です。

01

調査と論点整理

公開情報、業界動向、過去記事を要約し、企画前に確認すべき論点や追加調査の候補を出す。

02

企画の壁打ち

目的、対象、伝えたい事実を入力し、切り口、想定質問、反対意見、足りない根拠を洗い出す。

03

文章の構成と下書き

プレスリリース、ニュース、社内報、SNS、メールなどの構成案や初稿を作る。

04

相手に応じた書き分け

同じ事実を、顧客、社員、採用候補者、メディアなどの関心に合わせて再構成する。

05

FAQ・取材準備

発表内容から想定質問をつくり、回答に必要な事実、確認担当、未確定事項を整理する。

06

コンテンツの再展開

一つの発表や取材内容を、Web記事、営業資料、採用情報、SNSへ目的別に展開する。

07

反応の整理

記事、問い合わせ、SNS、営業現場の声を要約・分類し、次の発信テーマや改善仮説をつくる。

08

ナレッジの再利用

過去の発表、実績、経営者の発言、よくある質問を、検索・参照できる情報資産として整える。

重要

AIが出した「ファクトチェック結果」を、そのまま事実として扱うことはできません。確認すべき論点や出典候補を見つける補助として使い、原典と社内責任者で確認します。

03 / HUMAN RESPONSIBILITY

AIへ任せず、人が担うべき4つの領域

1

何を伝え、何を伝えないかの判断

企業の意思、社会的影響、発表時期、ステークホルダーとの約束は、経営と担当者が決めます。

2

事実と権利の最終確認

数値、固有名詞、引用、著作権、商標、個人情報、契約上の制約は、根拠と担当部署で確認します。

3

相手との関係構築

取材対応、対話、謝罪、合意形成、信頼の回復は、相手の反応を受け止めながら人が担います。

4

公開結果への責任

AIが生成しても、公開した情報の責任は企業にあります。誰が承認したかを曖昧にしません。

04 / RISKS

AI広報で管理すべき5つのリスク

広報は、企業の公式見解や未公開情報を扱います。便利さだけで導入範囲を決めると、効率化より大きな修正コストや信用リスクが生まれます。

誤情報・根拠のない生成
存在しない数値、制度、人物の発言、出典を生成する可能性があります。原典確認を必須にします。
機密・個人情報の入力
利用するサービスの契約、学習利用、保存、管理者設定を確認し、入力できる情報を分類します。
著作権・肖像・ブランド
生成物の権利や類似性だけでなく、素材の利用条件、自社の表記、第三者への配慮を確認します。
偏りと不適切な表現
学習データに含まれる偏りや、企業の価値観に合わない表現が出る前提でレビューします。
判断過程の不透明化
なぜその表現や対象を選んだか説明できるよう、使用した材料、指示、確認、承認を残します。

社内ルールをつくる際は、経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」など、最新の公的資料も確認してください。

05 / IMPLEMENTATION

AI広報を導入する7ステップ

ツールの比較から始めると、試用だけが増え、実務に定着しません。改善したい業務と、人が持つ責任から逆算します。

  1. 01

    目的を一つ決める

    「AIを導入する」ではなく、調査時間を短くする、初稿の停滞を減らす、FAQを整えるなど、改善したい業務を定めます。

  2. 02

    業務を分解する

    企画、情報収集、事実確認、執筆、承認、公開、観測に分け、AIへ任せる工程と人が判断する工程を見える化します。

  3. 03

    情報をリスクで分類する

    公開情報、社内情報、機密情報、個人情報を分け、入力可能な情報と利用環境を決めます。

  4. 04

    正しい材料を用意する

    会社概要、事業説明、表記ルール、過去の発表、数値の出典など、AIが参照する一次情報を揃えます。

  5. 05

    指示と出力の型をつくる

    目的、対象、使用する事実、禁止事項、出力形式、確認項目を含む指示テンプレートをつくります。

  6. 06

    確認と承認を設計する

    事実、表現、法務・権利、社会的影響、公開判断を誰が確認するかを決め、AI利用の有無にかかわらず記録します。

  7. 07

    効果を測って更新する

    作業時間だけでなく、修正回数、事実誤認、再利用率、問い合わせ、理解の変化を確認し、ルールと材料を更新します。

06 / WEEKLY WORKFLOW

小規模な広報チームの運用例

専任者が少ない場合は、すべてを自動化するより、社内から事実を集め、複数の接点へ展開する流れを短くする方が効果的です。

MON

事実を集める

事業、営業、採用、経営から、変化・実績・顧客の声・決定事項を集める。

TUE

論点をつくる

AIで整理・要約し、誰にとって重要か、何が不足しているかを担当者が判断する。

WED—THU

制作して確認する

構成や初稿を作り、事実・表現・権利・公開判断を人が確認する。

FRI

展開して観測する

各接点へ書き分け、反応や質問を次週の材料として記録する。

07 / CHECKLIST

導入前に確認するチェックリスト

  • 改善したい広報業務と、測る指標が決まっている
  • AIへ入力できる情報と、入力できない情報を区別している
  • 会社・事業・サービスについて参照させる一次情報がある
  • 数値、固有名詞、引用、権利を確認する担当者が決まっている
  • AIの出力をそのまま公開しない承認フローがある
  • 誤りが見つかった場合の修正・報告方法が決まっている
  • 効率だけでなく、内容の質や信頼への影響も振り返る

NEXT / DIGITAL PRESENCE

AIを広報で使うだけでなく、AIに企業をどう理解してもらうか。

社内業務の効率化と同時に、公式サイト、検索結果、生成AI、SNS、外部記事に分散する企業情報を整える必要があります。企業が管理できる一次情報と更新体制の設計はこちらで解説しています。

AI検索時代の企業情報設計を見る

RELATED PRACTICE

ChatGPTを広報実務で使うためのプロンプト例

調査、構成、プレスリリース、FAQ、取材準備、公開前レビューに使える10の型と、出力の確認方法をまとめました。

実務プロンプト10選を読む
AI広報ガイドラインのひな形を見る

FAQ

AI広報についてよくある質問

AI広報とは何ですか?

生成AIなどを使って広報業務の調査、企画、制作、展開、分析を支援すると同時に、検索やAIの回答でも企業の一次情報が正しく理解されやすい状態を設計する広報の考え方です。AIへの丸投げではなく、人の判断と責任を前提にします。

広報業務のどこからAIを使うべきですか?

まずは公開情報の要約、構成案、表現案、既存コンテンツの展開など、誤りがあっても公開前に人が確認できる低リスク業務から始めます。未公開情報や個人情報を扱う業務は、利用環境と社内ルールを確認してから判断します。

AIでプレスリリースを作成できますか?

下書きや構成案の作成には使えます。ただし、数値、固有名詞、権利関係、社会的な影響、発表タイミングの最終確認と公開判断は人が行う必要があります。

AI広報を導入すると広報担当者は不要になりますか?

不要にはなりません。AIが得意なのは候補生成や整理です。企業として何を伝えるかを決め、事実を確認し、社内外の関係者と合意し、結果に責任を持つ役割は人に残ります。