01 / WHY PR NEEDS ITS OWN RULES
全社ルールだけでは、広報の公開判断が残る
全社の生成AIルールは、利用サービスや情報セキュリティを中心に定めることが多くあります。一方、広報は、未公開の発表、経営者の発言、顧客事例、社員・取引先の個人情報、画像や引用などを扱い、最終的に企業の公式情報として公開します。
そのため広報向けルールには、入力管理に加えて「何を事実として出すか」「誰が表現と社会的影響を確認するか」「誤りをどう訂正するか」が必要です。AIに文章を書かせたかどうかではなく、企業として責任を持てる公開プロセスになっているかを基準にします。
このひな形は一般的な実務整理であり、法的助言ではありません。自社の契約、業界規制、個人情報保護、情報セキュリティ、知的財産の方針に合わせ、法務・専門部署と確認してください。
02 / FOUR PRINCIPLES
文章を書く前に、4つの原則を置く
AIの出力を事実として扱わない
数値、固有名詞、日時、引用、制度、出典を原典または社内責任者で確認します。
公開責任をAIへ移さない
作成方法にかかわらず、公開内容の責任者と最終承認者を明確にします。
情報は内容と利用環境の両方で判断する
入力情報の機密性だけでなく、契約プラン、保存、学習利用、外部連携、管理設定を確認します。
低リスク業務から段階的に広げる
公開済み情報の整理などから始め、検証と教育を経て利用範囲を更新します。
03 / INFORMATION CLASSIFICATION
入力基準は、情報を4段階に分けて決める
「機密情報」という言葉だけでは、人によって判断が変わります。広報で日常的に扱う具体例を入れ、迷った場合の相談先まで決めます。
| 区分 | 広報での例 | 基本方針 |
|---|---|---|
| 公開情報 | 公式サイト、公開済みリリース、承認済み会社概要 | 利用可 出典と更新日を確認する |
| 社内情報 | 未公開の原稿、社内会議メモ、担当者コメント | 条件付き 承認済み環境と業務上の必要性を確認 |
| 機密情報 | 発表前の業績・提携・新製品、顧客秘密、認証情報 | 原則禁止 例外は責任者と専門部署が事前承認 |
| 個人情報 | 氏名、連絡先、取材記録、応募者・顧客の情報 | 原則禁止 利用目的、同意、契約、学習利用等を個別確認 |
個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的に必要な範囲か、サービス提供者が入力データを機械学習へ利用するかなどを十分に確認するよう注意喚起しています。
04 / USE POLICY
用途を「可・条件付き・禁止」で具体化する
利用できる
- 公開情報の要約と分類
- 企画の論点・質問候補
- 承認済み文章の形式変換
- 公開前に人が確認する構成案
条件付きで利用
- プレスリリースの初稿
- 取材回答・危機対応の案
- 顧客事例や社員紹介
- 生成画像の対外利用
禁止する
- 未確認の出力をそのまま公開
- 機密・個人情報を無断入力
- 第三者の著作物を無断利用
- AIによる公開・返信の自動実行
条件付き業務には、使えるツール、入力可能な情報、必須の確認項目、承認者をセットで記載します。「慎重に使う」のような抽象表現は避け、担当者がその場で判断できる基準にします。
公的資料:文化庁「著作権テキスト」
05 / RESPONSIBILITY
「使った人」だけに責任を集めない
ガイドラインを守るには、利用者、内容責任者、公開承認者、専門部署の役割を分けます。小規模組織では同じ人が複数の役割を担っても構いませんが、確認の観点は省略しません。
| 役割 | 主な責任 | 確認すること |
|---|---|---|
| AI利用者 | 許可された環境・用途で利用し、出力と修正を記録 | 入力情報、推測、出典候補 |
| 内容責任者 | 原稿の事実・文脈・表現を確認 | 数値、固有名詞、引用、誤解 |
| 公開承認者 | 企業として公開するか最終判断 | 発表時期、影響、公式見解 |
| 専門部署 | 法務、個人情報、セキュリティ上の判断 | 権利、契約、事故、例外利用 |
誤情報、権利侵害、情報漏えいの疑いがある場合、誰でも公開を止められること、報告先、証跡を保全する範囲を明記します。
06 / TEMPLATE
AI広報ガイドラインのひな形
次の8項目を骨格にすると、禁止事項だけでなく、現場が使える運用ルールになります。社名、責任者、承認済みツール、情報例、保存期間は自社の実態に合わせて具体化してください。
- 01
目的
広報品質と業務効率を両立し、機密・個人情報、誤情報、権利侵害、信用毀損のリスクを管理する。
- 02
適用範囲
対象者、雇用形態、対象業務、利用端末、外部委託先、対象となる生成AIサービスを明記する。
- 03
承認済み環境
使用できるアカウント・プラン・機能と、管理者、契約、保存、学習利用、外部連携の確認方法を定める。
- 04
情報分類
公開情報、社内情報、機密情報、個人情報を区分し、入力の可否と例外承認を定める。
- 05
利用可能な業務
調査項目の整理、構成案、要約、書き分けなど、用途ごとの条件と禁止用途を定める。
- 06
確認と承認
事実、権利、表現、社会的影響、公開時期を誰が確認し、誰が最終承認するかを定める。
- 07
記録と開示
重要案件で残す入力・出力・修正・根拠・承認の範囲と、AI利用を説明する基準を定める。
- 08
事故対応と更新
誤公開や情報入力事故の停止、保存、報告、訂正、再発防止と、定期見直しの責任者を定める。
当社は、生成AIを広報業務の補助として利用します。AIの出力を事実または企業の公式見解として扱わず、公開前に定められた責任者が事実、権利、表現、影響を確認します。公開内容の責任は当社が負います。
07 / ROLLOUT
作って終わらせない、導入の6ステップ
- 01
利用実態を把握する
誰が、どのツールを、どの業務で、どの情報に使っているかを確認します。
- 02
リスクと便益を業務別に評価する
影響の大きさと、公開前に人が誤りを止められるかで優先順位を決めます。
- 03
暫定ルールで小さく試す
公開済み情報を使う低リスク業務から、期間と参加者を限定して検証します。
- 04
専門部署と承認する
広報だけで完結させず、法務・個人情報・セキュリティ・経営の観点を合わせます。
- 05
ケースで教育する
禁止事項の一覧ではなく、実際の原稿・情報分類・事故時対応を使って訓練します。
- 06
四半期または変更時に見直す
ツールの規約・機能、法令・公的指針、事故やヒヤリハット、業務実績を基に更新します。
経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」は2026年3月に第1.2版へ更新されています。IPAも、組織での生成AI導入・運用とリスク管理の実務資料を公開しています。社内ルールは固定せず、最新の公的資料と利用サービスの条件を定期的に確認してください。
公的資料:経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン 第1.2版」 / IPA「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」
PILLAR GUIDE / AI PR
ルールを、AI広報の業務設計へつなげる。
ガイドラインの前提となるAI広報の考え方、人が担う領域、導入手順は全体ガイドで解説しています。実際の入力形式はプロンプト集で確認できます。
「AI広報とは?」の全体ガイドを読む広報プロンプト10選を読む
FAQ
AI広報ガイドラインでよくある質問
AI広報ガイドラインは、全社の生成AIガイドラインと別に必要ですか?
全社ルールが、公開情報の作成、公式見解、取材対応、危機対応など広報固有の判断まで定めていない場合は、補足ルールが必要です。別文書にするか、全社ルールの広報向け付則にするかは、既存規程との関係で決めます。
生成AIの使用を全面禁止すれば安全ですか?
全面禁止だけでは、非公式な利用を把握できなくなる可能性があります。承認済みツール、入力できる情報、利用できる業務、確認・承認の手順を具体的に定め、守れる運用にすることが重要です。
AIが作った文章には「AI使用」と表示すべきですか?
一律の答えではなく、法令、媒体の規約、契約、読者への影響、自社方針で判断します。重要なのは、AI利用の有無にかかわらず公開内容の責任者を明確にし、必要な場面では説明できる記録を残すことです。
ガイドラインは誰が承認すべきですか?
経営または事業責任者をオーナーとし、広報、法務・コンプライアンス、情報セキュリティ、個人情報保護の担当が共同で確認する形が基本です。公開判断の責任と、ツール管理の責任を分けて定めます。